今日母からメールが来た。
膵臓癌で10時間に渡る大手術を乗り越えて、
執刀医にも、間違いなく手術室を出る時は、
亡骸になって出てくると思われていた手術を
その小さく細い身体で頑張って、
奇跡的な回復力で術後半年程で退院した母。
それまで狭心症の発作等で何回も死にかけて来た事を思うと、
驚異と言える生命力だったのだが、 彼女とて、やはり魔法使いではない。
ここ数カ月、目に見える程の体重の減少と、それに伴う体力の低下で、
目的と責任感から、ともすればオーバーワーク気味の彼女の負けん気に、
少なからず翳りが見えはじめたようだ。
どこの家にも有るような事ではあるが、父親と息子の確執ってやつで、
実家を石持て追われて勘当を食らった僕だけれど、
それまでの家庭内紛争に、母は一方ならぬ心痛を抱いていただろう事は想像に難くない。
言い換えれば僕は、折角持ちなおしかけていた母の健康を
ストレスばかりかけさせて、どんどん悪い方へと向かわせた張本人とも言える。
病後の療養を、心安らかに過ごさせてあげれなかったばかりか、
家を飛び出してからも、僕の経済的な事や食事や健康状態の事等で、
心配ばかりかけさせて、一向に親孝行出来ないでいる自分が不甲斐ない。
あらゆる面で自分が生きる事が精一杯で、親を安心させてやる姿を見せるのは愚か、
優しい言葉のひとつですら、母に投げかける気持ちの余裕がない僕には、
彼女が、「近況を知らせてくれ、お前と少しでも繋がっていたいから、
こうやって無理をしてパソコンに向かってメールを書いている」
と、訴えられても何も出来なくて、 泣きたい気分になってしまう。
這うようにしてベッドからパソコン迄辿り着き、自分の体調も省みず、
飛び出していってしまった息子の安否を問いかける年老いた母の気持ちや如何に。
出しても出しても返事のないメールを、それでも息子に出し続ける母。
ごめんなさい。
あなたのメールを読む度に泣けてしまって、僕は今日も返事が書けません。
こんな時なのに、あなたの側にいて、身体を気遣ってあげたり、
あなたを安心させてあげられない事が何より心苦ししく思います。
本当は、電話がかかって来ても、色々と話しをしたいんだけど、
本当に、僕はあなたと話したいんだけど、
張り詰めている心の糸が切れてしまうような気がして、
せっかくあなたが近況を聞いてくれても、
ぶっきらぼうに「忙しいから。」と、一方的に電話を切ってしまう。
心配ばかりかけて、ごめんなさい。
優しい言葉のひとつもかけてあげられなくて、ごめんなさい。
自慢出来る息子じゃなくて、ごめんなさい。
でも、僕はあなたの息子である事を、 いつも誇りに思って生きています。
恐らく、そう何年もないであろう 残されたあなたの人生を、
側にいてあげる事が出来ない 僕を許して下さい。